このブログは自動車評論家ではない筆者が、フォード・フォーカスの次に乗りたいと検討した車を乗り味、デザイン、使い勝手、そして所有感が持てそうなことに焦点を当てた超主観的な試乗記である。
判断基準とするフォード・フォーカスは2013年製。
7代目フォルクスワーゲン・ゴルフが登場する前年の2011年から販売され、2012年上半期には、単一車種として世界で一番売れたグローバルカーである。
但し、この車を日本国内で見かけることはほとんどない。
今回はマイナーチェンジでグレードダウンしたルノー・メガーヌ・スポーツツアラーだ。
普通のクルマになってしまったメガーヌ・スポーツツアラー
メガーヌと言えばホットハッチに属するメガーヌR.S.。
国産車だったらシビックTYPE RやGRヤリスなのかな。
我がフォーカスの場合は、フォーカスSTをマニアが並行輸入しているみたいだ。
そしてメガーヌには、そういった競技用マシンの開発チームが手掛けた一般向けのメガーヌGTがあったのだが、2021年のマイナーチェンジでGTグレードがなくなってしまった。
このGT仕様はR.S.と同じ4WSであることを最大の特徴としていて、ギミック好きのマニアのみならず注目されていたクルマであった。
筆者がメガーヌのステーションワゴン版のスポーツツアラーを選択したのは、ハッチバックの荷室床がセダン車のように低く使い勝手が悪いと思われたからだ。
ところでメガーヌはR.S.とリア周りのパーツを共有している関係で、外観からは分かりづらいのだが、リアバンパーに厚みがあって荷室が奥まっている。
荷物の出し入れでバンパーにキズが付きやすいだけでなく、雨や洗車時にバンパー奥に入り込んだ水が残ってしまうのが気にかかった。
メガーヌはガソリン、ディーゼル、PHEVがあるのだが、国内に入っているのはガソリンのみで、かつ、3つあるグレードの内、中間のインテンスのみになっている。
スポーツツアラー・インテンスの価格は334万円。
グレード間の金額差は30万円程度と考えられる。
上位のR.S. lineは、GT仕様にあった4WSがなくなり、かつ、排気量も1.6Lから1.3Lになってしまった。
R.S. lineとインテンスでは、センターディスプレイのサイズが9.3インチと7インチの違いもあるが、実質、タイヤとアルカンターラのシートが違うだけなので、割高感があると思われたのだろう。
いずれにせよ唯一無二のようなGT仕様がなくなり、普通のクルマになってしまったメガーヌ・スポーツツアラー。
早速、乗り込んでみた第一印象から。
「う~ん」
良い面もあるのだが、やはり買う価値に乏しい
改めて認識したのは、ホイールベースの長さと後席の広さは比例しないってことだ。
2710mmのホイールベースはハッチバックよりも40mm伸ばしているが、後席の足回りはお世辞にも広くない。
恐らく2635mmの7.5世代ゴルフや2650mmの我がフォーカスに比べて、ほぼ同じと言ってよい。
また、シートの座り心地は悪くはないのだが、後席から目に入るヘッドレスト等のレザー調シート素材が安っぽく見え、とても300万円超えの車に思えないないのが残念な所だ。
更に、1時間程の試乗をしたところ、お尻が痛くなったことから、シートが少しやわらかすぎて体を支え切れていないと思われた。
こうなるとR.S. lineのないことが悔やまれる。
次に走り出しの印象。
「う~ん」
7速DCT(DSG)と1.3リッター4気筒ガソリンターボは、アクセルを踏んでから一瞬遅れて滑らかに走り出す。
か細いトルクで「よっこらしょ」と走り出す感があるなぁ~。
よくある小排気量ターボ車の走り出しだ。
車重1.4トンを動かすには、ノンターボ状態の1.3Lガソリンは流石に小さすぎる。
逆にクラッチへの負担が小さいのだろう、7速DCT(DSG)はスムーズに繋がるようだ。
一旦走り出せば静かに聞こえる4気筒ガソリンエンジンの音。
やっぱり聞きなれた4気筒エンジン音は、3気筒と違ってそわそわ感がなくて良い。
しかし、Stop & Goを繰り返す街中では、そんなエンジン音もかき消され、もっさり感の走り出しばかりが気になってしまう。
PHEVの走りは全く分からないが、少なくともガソリン車よりはマシなのではと思ってしまった。
ターボの効いた状態で走る分には十分にパワフルで、更にスポーツモードに切り替えるとメーター表示がオレンジになり、エンジンの疑似音が追加されて、いかにも度が増す。
ちなみにドライブモードは、スポーツの他、ノーマルとコンフォートが選べるだけでなく、中間グレードのインテンスであっても、ユーザ設定モードでハンドリングやエンジン疑似音などを変えられるあたりは、このクルマの売りなのではないかと思った。
ワインディングでの走りでは、カーブでの車体のロールが大きく、踏ん張りが必要な場面が何度もあり、シートの出来の悪さも手伝って疲れるの一言。
走れちゃうけど、少なくとも山道でパワフルさを発揮させたくなくなるクルマであった。
現状、ルノー車に選択肢はなさそうだ
フランス4社(ルノー、プジョー、シトロエン、DS)の中で、一番フツーなのがルノーだと思われる。
何せプラットフォームの多くは日産と共通だ。
ハンドルも円形でフツーのサイズだし、タコメーターだって時計回り、ブレーキだって踏み込みに比例して効くタイプだ。
カングーなんてユニークなクルマもあるけれど、このメガーヌは2代目のリアが「これぞフランス車」と思わせたが、3代目、4代目と段々特徴が薄れてしまってきているように思える。
デザインまでフツーになっちゃうとメガーヌの良さって何?
新型のプジョー308SWに完璧にノックアウトされそうなGTを失ったメガーヌ・スポーツツアラー。
せめてR.S. lineがあれば検討対象?、いや、そもそも走り出しのもっさり感があるから選択しないだろうなぁ。
PHEVのインテンスは429万円のアルカナ(ハイブリッド)と同じぐらいになってしまうだろうから、ハイブリッドとPHEVを同一視されちゃう日本に入ってくる可能性は低いと思われる。
かと言って、3年落ちで未だに300万円前後の値を付けている中古のGTに手を出すことも。
そう言えばアルカナも全高1580mmって、残念ながらルノー車に選択肢はなさそうだ。
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