NEXT to Focus #4|フォーカスとはルーツが一緒、マツダ・MAZDA3

このブログは自動車評論家ではない筆者が、フォード・フォーカスの次に乗りたいと検討した車を乗り味、デザイン、使い勝手、そして所有感が持てそうなことに焦点を当てた超主観的な試乗記である。
判断基準とするフォード・フォーカスは2013年製。
7代目フォルクスワーゲン・ゴルフが登場する前年の2011年から販売され、2012年上半期には、単一車種として世界で一番売れたグローバルカーである。
但し、この車を日本国内で見かけることはほとんどない。

今回は先代までアクセラの名称だった4代目MAZDA3ファストバックだ。
SKYACTIV-G 2.0とe-SKYACTIV Xの2WD車の乗り比べになる。

フォード傘下時代に誕生したMAZDA3

MAZDA3は国内では先代までアクセラとして売られていた車だ。
初代アクセラはファミリアの後継車種として2003年に登場している。
但し、車名が変わっているように、ファミリアとアクセラは全く別の車だったようだ。
2003年頃、マツダはフォードの傘下にあって経営再建中だった。
このことからアクセラは、フォードの世界戦略車であるフォーカスの2代目モデルのプラットフォームを使っている。
このプラットフォームを使った車は、他にボルボ・S40とV50がある。
国産車としてはかなり大柄な初代アクセラは、海外でMAZDA3として販売され、フォーカスよりもスポーティーなイメージ(実際の乗り味は筆者には分からないが)で大ヒットとなる。
もちろんフォーカスも世界的には売れたのだが、日本ではアクセラと比べ物にならないほどヒットしなかった。
その後、フォードの傘下から離れたマツダであったが、2009年からの2代目アクセラも、2代目フォーカスのプラットフォームで開発されている。
MAZDA3がフォーカスと異なるプラットフォームになったのは2013年に登場した3代目からだ。
筆者の3代目フォーカスもプラットフォームを一新して2012年に登場している。
そして4代目アクセラは、2019年に日本名もMAZDA3として登場した。
2代目フォーカスから別れ、2世代を経たMAZDA3はどのように進化したのだろうか。
フォーカスで乗り付けたマツダのショールーム、店長さんが対応してくれたのだが、当然MAZDA3とフォーカスの関係など知らない感じだった。

MAZDA3はスタイリングに惚れて買うクルマなのでは

マツダ車と言えば赤のイメージがあるが、4代目のMAZDA3の赤はソウルレッドクリスタルメタリックと言う新色になって、深みのある高級感漂う素敵な色になったと思う。
けっして高級車ではないものの、赤のMAZDA3はボディー形状と相まって美しく、この車を1ランク上に見せているのではないだろうか。
但し、見た目を重視するがあまり、実用面で犠牲になっている所があると筆者は感じた。
まずクーペスタイルに見せたかったのか荷室のサイドウィンドウがないのと、後席の窓も小さい為、後席がともかく暗いのだ。
更に内装もブラックで統一しているため、後席に座ると閉じ込め感があり過ぎる。
そもそも後席はシート座面が低すぎるのと、お世辞にも広くない足元スペースによって、体育座りを余儀なくされ、長時間ドライブには向いていない。
Cセグメントとしてはかなり長い2725mmものホイールベースでありながら、その大半は前席に振られていると思われる。
ではこのクルマは基本2人乗りのクーペと考えられるのかと言うと、後席の背もたれに十分な高さがあり、ヘッドレストがシートに格納されることもないので、後ろに人を乗せなくてもリアの視認性が悪いのだ。
この何とも割り切りの悪い中途半端なデザインによって、斜め後方からリアにかけて大きな死角のある車になってしまったと言えないだろうか。

実用面で犠牲になっている所は他にもある。
幅のあるセンターコンソールがテカテカの黒のプラスチックなので、埃や指紋がどうしても目立つのだ。
カタログ写真ではきれいに見えるが、車内を無塵状態に保つことは不可能な訳で、どうしても埃の付いたセンターコンソールに目が行ってしまい、他のインテリアの印象まで落とす結果になる。
まあ、レザー調のシールでも貼ればいいのかも知れないが。

更に頂けなかったのはレザーシートだ。
細かな穴がパンチングされたレザーシートは見た目だけは高級感がある。
しかし、座った途端、なんだこれはと感じる程、表面に硬くて滑るコーティングが施されており、全くレザーの質感がない。
特に座面の幅が微妙に広いリアシートは、体が沈み込まないためにサポート性がめちゃくちゃ悪い。
まぁ、この車で後席がどうのこうのは、エマージェンシーシートととして評価した方が良いのだが。
そういう意味では、見た目だけはいいで~す。

「どうです?インテリアの質感高いと評判なんです」とは、助手席に座った店長さんの言葉。
「う~ん。シルバーの使い方がいいですね」とグローブボックスの上に横一本に入ったクロムを褒めるのが精いっぱいだった筆者。
プジョー2008やシトロエンC4を試乗した後だったこともあり、MAZDA3の運転席周りのデザインは流行りのレザー調と言うだけでおしゃれ感に乏しい。
チープ感はないのだが、あえて褒める所が少ない無難なデザインと言える。
もしかしたら、この無難さが人間工学的に違和感を生まないマツダの目指すデザイン?

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e-SKYACTIV Xが売れないのは分かるなぁ

さて、そろそろ乗り味についての本題に入ることにする。
MAZDA3を購入するにあたりガソリンの2WDには、SKYACTIV-G 2.0とe-SKYACTIV Xの2つの選択肢がある。
SKYACTIV-G 2.0は2リッターの直噴エンジン。
e-SKYACTIV Xはガソリンをディーゼルのように燃焼させる風変わりなエンジンと、発進時にモーターアシストが付く。
走り出しはモータアシストのあるe-SKYACTIV Xがスムーズなのだろうが、左足ブレーキの筆者の場合、アクセルに足をかけた段階でブレーキを外すため、ほぼSKYACTIV-G 2.0との差を感じなかった。
欧州車に多い小排気量ターボ車ではないMAZDA3の場合は、2リッターの直噴エンジンでも十分な走り出しトルクがあるのだろう。
アイドリング・ストップからの復帰にモーターを使うか否かと考えれば、本来この車にモーターアシストは不要と思われ、そうなるとSKYACTIV Xのエンジンの始動に時間がかかるのかと疑ってしまう。

エンジンの違いに関わらずMAZDA3の走り出しには加速感がない。
けっして遅い訳ではなく、スーっと加速して気が付けば定速域に達している。
これはこれでアリなのだとは思うが、多少できの悪いDCT(DSL)に慣れた筆者からすると物足りなさを感じてしまう。
マツダはそういうユーザにはMTで対応するつもりなのだろうが、フォード乗りはあくまでもイージードライブを追求したいのでMTの選択肢は持ち合わせていない。
アクセルを踏めば、すぐにスーっと加速する。
どこが悪いのかと言われそうだが、筆者はスーっとではなく、ガツンが好みなのだ。

さて、エンジンの違いが出たのは上り坂である。
男3人で乗り合わせたMAZDA3は、跨線橋の手前で停止から、できれば登りきる前に60Km/hの定速域に達したかったが、SKYACTIV-G 2.0の方はアクセルをかなり踏み込まないとイメージ通りの走りができない。
要するにSKYACTIV-G 2.0は2リッターの割にパワーのないエンジンだと分かった。
一方、e-SKYACTIV Xはモーターアシストと、エンジン本来のパワーの違いもあってか、余裕の走りができた。
e-SKYACTIV Xは2リッター以上のパワーを感じるエンジンと言える。
但し、そこそこの回転数となるのかエンジン音は軽いので、大排気量の車のイメージはない。
仕組みの違いからSKYACTIV Xエンジンは、SKYACTIV-G 2.0より音が大きいらしいのだが、窓を閉めた車内にいる限り両者の違いは分からないぐらい防音対策がされている。

そんなe-SKYACTIV Xは、なぜか日本では売れていないと聞く。
SKYACTIV-G 2.0との価格差は約70万円。
MAZDA3のカッコよさで買おうとする人にとっては、SKYACTIV-G 2.0で十分となるのかも知れない。
筆者も一人乗り中心で考えれば、SKYACTIV-G 2.0でも構わないような気がする。
しかし、まともにMAZDA3を走らせようとするならSKYACTIV-G 2.0の選択肢はない。
プラス70万円、しかもハイオクであってもe-SKYACTIV Xの方が無難だろうし、そういう価格帯の車と考えて評価した方が良いのかも知れない。
そうは言ってみても、エンジンメカニックにそれ程興味のない筆者には、価格差70万円は何なんだと、マツダの価値観にはついていけそうにない。
ガソリン代などユーザ側から考えれば、e-SKYACTIV XはSKYACTIV-G 2.0とディーゼルの中間にくる訳で、せめてディーゼルと同価格にして選択させるぐらいの価格設定が必要だと思う。

しっとり系のMAZDA3はFF車の乗り味を出し過ぎ

MAZDA3の乗り味はフォード・フォーカスに似たしっとり系である。
幹線道路を走る分にはフォーカスとの違いはほとんど感じなかったが、継ぎはぎのある荒れた舗装面になると、振動が割とストレートに伝わってくることがあった。
一番の違いはコーナリングでのアンダーステアが出やすいと感じたことだ。
MAZDA3には4WDも用意されており、マツダ車の中にはFR車もラインアップされている。
あくまでも筆者の勘ぐりなのだが、SKYACTIV-G 2.0が2リッターにしては非力であったように、FF車に対してあえてアンダーステアの味付けをしている?
まぁ、味付けと言うよりFF車に対して、ご自慢のトルクベクタリングの効きを強くせず、素のFFが出ているに過ぎないとも言えるのだが。
今回、4WDでの試乗はできなかったが、少なくともFFのMAZDA3はワインディングを気持ちよく走れそうにないと想像できる。

MAZDA3のe-SKYACTIV Xの4WD車は約350万円からで、ここにオプションが10から30万円程必要だ。
価格的にもCセグハッチバックのど真ん中だと考えると、この車の魅力はほぼ外観のみとも言えないだろうか。
外観のみならSKYACTIV-G 2.0のFF車で十分価値がある?
そー言うクルマなのかも知れない。

今の車、どこで売る?

撤退したフォードが言い残した「日本市場の閉鎖性」とは

ところで、なぜフォードは日本から撤退したのだろうか。
2016年初頭にフォードは日本市場の閉鎖性を理由に、当時販売台数ではフランス車各社よりも多かったにも関わらず日本からの撤退を発表した。
多くの人は「日本市場の閉鎖性」が良く分からなかったのではないだろうか。
既に輸入車の関税はゼロになっていたし、複数メーカーの新車販売をする店もちらほら出てきていた。
かく言う筆者もフォードの言う閉鎖性が何を意味していたのか理解できなかった。

日本市場には4つの乗用車市場がある。
超小型EVで話題の超小型モビリティ、軽自動車、小型自動車、高級車だ。
この内、海外にないのは軽自動車になる。
軽自動車は敗戦後、占領中のアメリカから自動車の国内製造を制限された時代に、乗用車に匹敵しない程度の車両として、規制を受けるクルマとして1949年に誕生した。
元々、ミゼットのような3輪貨物車が中心だった軽自動車も、現在は乗車人数こそ4名になるが、コンパクトカーよりも車内にゆとりのあるハイトワゴンが主流になり、国内の乗用車市場の約4割を占めるまでになっている。
つまり海外メーカーにとっては、市場の4割には入り込めない状態が日本のみに存在する。

軽自動車はコンパクトカーと同じ価格帯であるが、税金や保険代が安く抑えられている。
したがって経済性や実用性を重視するユーザなら、コンパクトカーではなく軽自動車を買うことになるだろう。
収入が増えたり、子供が大きくなったりで、軽自動車から小型乗用車への乗り換えを考えた時、そのようなユーザはかつてはミニバン、今ならSUVを選択するのではないだろうか。
もちろんSUVは数ある国産車から選ぶことができるのも日本ぐらいだ。
例えばヨーロッパでバカ売れしているルノー・キャプチャーは、日本では選択肢に入れないのはなぜか。
かつて乗用車は庶民のあこがれで輸入車が主流だった。
そこに庶民でも買える軽自動車が出てきたことから、日本人には輸入車に対して高級車のイメージが定着したまま現在に至っているように思える。
だから日本での輸入車台数のトップはメルセデスなんて異常な市場になっている。
小型自動車のキャプチャーは輸入車なのに高級車ではないから、庶民のSUVの選択肢に入れないのだ。
これが日本では小型自動車=国産車と認識する第二の閉鎖性だと思う。

もう少し日本国内の乗用車市場を深堀してみると、販売台数の約1/3がトヨタ車である。
トヨタの軽自動車販売台数はごくわずかなため、残り2/3、すなわち67%から軽自動車の40%を引いた27%がトヨタと軽自動車を除いた他メーカーが入り込める余地なのだ。
日本の乗用車市場は欧州の約1/3で、フォードが入り込める余地はその約1/4、欧州の1/12しかない市場に魅力を失ったのも納得できないだろうか。
それはフォードのみならずトヨタ以外の日本メーカーも同じなのだ。
今、日本の自動車メーカーは軽自動車を除き、すっかり海外ユーザ向けにクルマを開発している。
ではトヨタはと言うと、最初に価格設定をして仕様を取捨選択する80点主義、全てとは言わないがプリウスをはじめ多くの車種が、どちらかと言うとコスパ第一優先であり、クルマに興味のないユーザに魅力ある車を提供しているメーカーだ。

日本のユーザの多くはショーウィンドウの車を見て購入を決めてしまう。
購入の判断基準は、ブランド、デザイン、使い勝手や車内の広さ、そして価格なのだろう。
フォードが日本で販売台数を伸ばせそうなのは本来、小型乗用車のフォーカスとフィエスタだ。
しかし、日本でのフォードに対するブランドイメージはアメ車メーカーであり、実際に売れたのはエクスプローラーだった。
フォーカスとフィエスタの魅力はハンドリングの良さであるが、それを試乗もせずに購入する車を決めてしまう日本ユーザに売ることは極めて難しい。
元々が海外メーカーからして小さな日本市場なので、切り捨てる選択はある意味正しかったのかも。

4代目フォート・フォーカス

フォーカスのハンドリングって、そんなにいいの?

それにしてもフォーカスのハンドリングの良さを再認識する結果となったMAZDA3。
MAZDA3(もしかしたらFFのみ)のアンダーステアを指摘する日本のユーザは中々見つからないが、「いゃ~、この車はダメでしょ」とフォーカス乗りの筆者は痛感してしまった。
けっして攻めた走りで評価するつもりはなかったので、今後は筆者がフツーと考えるカーブでの走りも試さないとハズレの車が今でもあるんだ。
ちなみに、MAZDA3のアンダーステアを指摘した際、「スポーツカーではないので、これが普通です」と例の店長が答えた。
確かにフォーカスに乗り換える前の筆者の車はこんなものだったかも。
これは、もしかしてまずい?
選択肢が狭くなる不安がよぎってきた。

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